LGBT本紹介

ありのままに生きるには?『元女子高生、パパになる』

元女子高生、パパになる
【deidei】

トランスジェンダーのdeideiが、LGBTに関する本を紹介するコーナー、始めました!
今回紹介する本はコチラ!

2020年11月11日発売の、杉山文野さんの約15年ぶりに執筆した本『元女子高生、パパになる』

杉山さんといえば、大学生の時に初めて『ダブルハッピネス』を出版しました。

この時は、性同一性障害である辛さを抱えながらも、家族や友達などと真剣に向き合い前向きに生きている姿をたくさんの人に見せてくれた、トランスジェンダーのロールモデルの一人です。

今でも、

  • TOKYO RAINVOW PRIDの共同代表
  • LGBTの子どもたちの支援をおこなう『ハートをつなごう学校』の運営
  • LGBTに関する研修の講師  など…

LGBTの方が生きやすい社会になるように様々な活動をされています。

そして、2作目となる『元女子高生、パパになる』。

表紙を見て、杉山さんがAID(非配偶者間人工授精)に奮闘した体験談なのかなと勝手に思ってました。

確かに子どもを授かって育てていくことも書いていますが、それ以上に大きなメッセージが込められていると思ってます。

一言で表すなら、

【deidei】

ありのままで生きるためはどうするか?を考えるきっかけとなる一冊です!

なぜ私がそう感じたか、本の一部を引用し、私の体験も踏まえながら紹介していきます!

↓ Amazonのkindleで無料サンプル読めます

本の目次・概要

『元女子高生、パパになる』の気になる目次はコチラ

はじめに

第1章 彼女のこと

第2章 親のこと、活動のこと

第3章 東京レインボー プライド

第4章 同性パートナーシップ条例

第5章 ファミリーのこと

未来へ あとがきにかえて

※詳細な目次は、Amazonのkindle版サンプル(無料)で見ることができます。⇒サンプルダウンロード

第一章は、子どもを授かるよりかなり前の、パートナーである彼女とのなれそめや、前著『ダブルハッピネス』を出版した後、自身の性別と真摯に向き合う姿がつづられています。

第二章は、交際している彼女のご両親と向き合うかたわら、LGBTQの活動をさらに拡大していく姿がつづられています。

第三章は、TOKYO RAINBOW PRIDの立ち上げに奮闘する姿、そこで改めてLGBTQ当事者の価値観の多様性に気づかされる話。

第四章は、同性パートナーシップ条例を作るまでの奮闘記と、その条例をめぐって賛否があった炎上についても詳細に綴られています。

第五章は、杉山さんは性同一性障害であるが、戸籍上の性別は女性のまま。そんな中、彼女と親友とともに3人で親になる決断や、フィジカルでは妊娠にかかわれない複雑な気持ちなどがつづられています。

あとがきは、これまで様々なセクシュアリティに関する活動を行ってきて、杉山さんが考える、本当の意味での多様性の答えがつづられています。

ありのままで生きるためにはどうすればいい?

【deidei】

私が『元女子高生、パパになる』を読んで、ありのままに生きるために必要だと思ったことは、大きく2つあります。

  1. 自分自身を受け入れること
  2. 社会が多様性を受け入れること

”個人”がありのままに生きようと前向きになっていても、”社会”がその個性を受け止められない。
”社会”が多様性を受け入れても、”個人”が自分を受け入れられない。

”個人”と”社会”のどちらが欠けても、ありのままに生きることは難しいんじゃないかと思うようになりました。

じゃあ、ありのままに生きるために、”個人”と”社会”はどうすればいいのか?

この2つについて本を通じて得た気づきを詳しく紹介していきます。

自分自身を受け入れること

【deidei】

『自分自身を受け入れる』って言うけど、そんな簡単なものじゃないですよね。

『ダブルハッピネス』で前向きに生きる姿を見せてくれたり、社会を変えようと活動している杉山さんも、簡単に受け入れるようになったわけではありませんでした。

「30歳で死のうと思っていた。」と語っているように、将来の希望が持てない中でも、自分自身と深く向き合うことで、受け入れることができるようになったんだと思います。

子どもは、身近にいるカッコいい大人に憧れて、具体的な将来を描いていくものだ。

~ 中略 ~

しかし、当時の日本ではLGBTQであることをオープンにして社会生活をおくる大人は、ほとんど目にすることができなかった。だから、自分が将来どうやって生きて行ったらいいか、未来を描くことができなかった。

『元女子高生、パパになる』より

身近にいるカッコいい大人。将来は自分もこうなるんだと思えるような大人=ロールモデルがいないと、前向きになることも難しいんじゃないでしょうか。

私がまだ子どもだったころを思い返してみると、
自分は男扱いをされて、女の子と付き合いたいと、おぼろげに気づいたころ、
同じような人が周りにいなくて、「結婚できるのか?」「そもそも付き合うことすらできないんじゃないか?」と、不安になって身動きが取れずにいました。

杉山さんの前著『ダブルハッピネス』に出会ったのもちょうどその頃。

「ああ、この人はこんなにも前向きに生きていけてるんだ。自分も周りに打ち明けて前向きに生きれるようになるのかな。」

暗闇の中で身動きが取れなかったけど、少し希望の光が見えた気がした。

それから杉山さんは、私にとってのロールモデルになりました。

一方、『バブルハッピネス』を出版した影響もあってか、
杉山さんが何をしても自分の性別がついてまわる状況から逃げ出すため、2年間、バックパッカーとして過ごしていたそうです。

その旅の中で、気づいたことをこのように語っています。

この2年近くの逃避行=放浪生活を経て、たどり着いた答え、それは「結局どこへ行っても僕は自分の性別からは逃げられない。いや、性別だけでなく、世界中どこに行っても自分自身から逃げることはできないのだ」ということだった。

~ 中略 ~

自分の嫌な部分や弱い部分、現実から目を背け、自分を一番受け入れられていなかったのは、他ならぬ自分自身だったことに気づいた。

『元女子高生、パパになる』より

嫌なことって、たいてい逃げればどうにかなる。

嫌な宿題はやらずにゲームをしたり、クラスメイトの喧嘩が嫌なら距離をとったりすることはできますよね。

でも、自分自身のことからは逃げられな

そのことに気づかないと、自分がどうすればいいのかに目を向けられないんじゃないでしょうか。

自分自身からは逃げられないことを知り、ロールモデルを見つけて前向きに生きていこうとする。

それだけでありのまま生きれるなら、今生きてるすべてのトランスジェンダーはありのままに生きられるはずですよね。

でもそうはなってない。それはなぜだろう?

そう考えながら読み進める中で、ヒントの最後のピースが埋まる出会いがありました。

引退してから10年以上経った今でも、僕はその弱さをずっと自分のせいだと思い込んでいた。しかし社会における多様性=ダイバーシティについて自分なりに学んでいく中で、ある言葉に出会い、ハッとさせられた。

心理的安全性(psychological safety)

この言葉は、周囲の反応に怯えたり羞恥心を感じることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境や雰囲気のことで、2015年にGoogle社が「心理的安全性は、成功するチームの構築に最も重要である」と発表したことで注目を集めた言葉だ。

『元女子高生、パパになる』より

社会の問題も関係しているかもしれないけど、自分からから安心できる場所に身を置くことも大切ですよね。

遠くにいるロールモデルのようになろうと思っても、実際に身の回りにはいない。
LGBTに対して批判的な発言をする人が周りにいる。

そんな環境の中では、自分を認めて前向きに生きようと頑張っても、並大抵の精神力がなければ、ありのままになんていられません。

ありのままでいられる環境を選ぶ ⇒ 自分をさらけ出す ⇒ 受け入れてもらえる

このプロセスを繰り返すことで、自分をさらに肯定できるようになるし、ありのままいれるようになるんだと思うようになりました。

LGBTのコミュニティだったり、TOKYO RAINBOW PRIDEなどのイベントに参加してみることも、『心理的安全性』を高めるために大切なのかもしれませんね。

どうすれば自分を受け入れることができるか?

  1. ロールモデルを通じて、将来に希望を持つ
  2. 自分自身や現実から目を背けない
  3. 安心していられる環境に身を置く

社会が多様性を受け入れること

”個人”が自分が受け入れるためには、『心理的安全性』がある場所でいることが大切だとわかったけど、それはコミュニティスペースだけでは不十分なのか?

わざわざ社会に対してアクションを起こしてまで、LGBTを認めてもらおうと思う必要はないんじゃないか?

【deidei】

私自身、そう思ったことがないわけではありません。
でも、それだけでは不十分だと気づかされました。

杉山さんは、NHK教育の『Our Voices』の司会として、セクシュアリティだけでなく、依存症、シングルマザーの問題など、様々な深刻な問題に向き合ってきました。

そんななか見えてきた社会的な課題をこのように語っています。

セクシュアリティや鬱、その他さまざまな依存症のように、なかなか目には見えない問題から、身体の欠損などのように目に見える問題まで。当事者の方と話していく中で、共有の課題も見えてきた。

その多くは、「人と違う」ということが問題視されているが、実際には「違いを受け入れられない社会や人々の意識」の方に多くの問題があるということ。特に、彼らが感じている生きづらさは、周囲の無知や無理解からきていることが多く、更に社会の課題が個人の課題に責任転嫁されていることも多い。

『元女子高生、パパになる』より

『人と違う』ことが問題ではなく、
『人と違う』ことを”受け入れられない”ことが問題であり、
それは、無知や無理解によって起こっている。

「LGBTってテレビで見る変な格好をした人でしょ。」
「同性のことを好きになるんだ。私のこと襲わないでよ!?」
「自分の周りにはLGBTなんていないよ」

そんな言葉が飛び交う中で、ありのままでいることは難しい。

社会全体で、無知や無理解を少なくして生き、みんなが多様性を受けいれられる環境はとても大事なのではないでしょうか。

全体を読んで感じたこと

ここまでは『ありのままに生きるために必要なこと』を紹介してきましたが、それは本を通して学んだことのほんの一部です。

これ以外にも、

  • トランスジェンダーが子どもを授かるまで、彼女や彼女の両親とどう向き合ってきたか
  • トランスジェンダーの代表として発信することへの覚悟
  • 多様な価値観と向き合ってきた中で見つけたリーダーシップ論 など

紹介しきれないくらいに、15年間の奮闘を赤裸々に語ってくれています。

『元女子高生、パパになる』は、

  • セクシュアリティであることで悩んでる方には、一つのロールモデルにもなる。
  • これから社会の課題に向き合おうとしている方には、取り組む姿勢を考えるきっかけになる。

そんな本じゃないでしょうか。

最後に、この本を読んで、一番心に刺さった言葉を紹介します。

誰ひとりとして同じ人がいない中では、誰もが何かしらのマジョリティであると同時に、マイノリティなのだ。

『元女子高生、パパになる』より

私がトランスジェンダーであることは”マイノリティ”だけど、
正規雇用で働くサラリーマンとしては”マジョリティ”
毎年大きな病気もなく、健康体でいられることも”マジョリティ”

自分がマイノリティであることばかりを気にして劣等感を持ったまま生きてきたけど、見方を変えたらマジョリティでもあることに、ハッとしました。

私が傷ついてきたように、
無知や無理解で誰かを傷つけているのかもしれない。

それなら、もっといろんな価値観に触れて、いろんな社会的課題についても考えていこう。

『元女子高生、パパになる』は、私がこれから社会とどう向き合っていくかを、考えるきっかけをくれました。

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ABOUT ME
deidei
ひっそり埋没しながら暮らしているFTM(女→男に戸籍変更済み)です。 女性として地方で生活→就職のため都会へ→現在は、男性サラリーマン街道邁進中!(7年目) 環境を変えることで、少しずつ、自分らしく生きれるようになりました。 FTMとして生活する中で学んだことや自分自身の経験を、わかりやすく発信していきます。
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