LGBT本紹介

FTMの恋人との将来が不安な方へ『ヒゲとナプキン』

ヒゲとナプキン
【deidei】

トランスジェンダーのdeideiがLGBTに関する本を紹介するコーナー
第2回目に紹介する本はコチラ!

トランスジェンダーの杉山文野さん原案、『五体不満足』がベストセラーになった乙武洋匡さん著の新刊、『ヒゲとナプキン』

タイトルからはどんな内容なのか、よくわからないですよね。

『ヒゲ』は男性的な特徴だし、『ナプキン』は女性的な特徴。

表紙に描かれてる人は男性に見えるけど…

あらすじにも書かれてるので、種明かしすると、

『ヒゲとナプキン』は、女性として生まれたけど、男として生きている、28歳のトランスジェンダー(FtM)が主人公の小説です。

この本を一言で表すなら、

【deidei】

トランスジェンダーが職場や恋人・親との関係の中でどんな悩みがあるのか知りたい方におすすめの一冊です!

特に、トランスジェンダー(FtM)と恋人との関係、将来のことがとてもリアルに描かれています。

「男女が結婚して子どもを産み育てる」という、こうあるべきとされている家族像。

トランスジェンダーにとっては、その家族像を実現することがとても難しいのが現実です。

そんな中で、FtMの”イツキ”と恋人の”サトカ”が、お互いの想いをぶつけ合いながら、どんな家族のかたちを作っていくのか…

もし、FtMとの交際で、将来が見えずに不安を感じているなら、ぜひ一度読んでみてください!

ここからは、物語のあらすじや、主人公イツキがどんな悩みを抱えているのかなどを、本の一部を引用しながら紹介していきます。

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本の概要

『ヒゲとナプキン』のあらすじはコチラ。

女として育てられ、現在は男として生きるイツキ、28歳。勤務先の旅行会社には「過去」は告げていない。2歳上のパートナー女性、サトカはイツキを愛しつつも、出産への思いを募らせていく。職場、恋人、両親…。社会や家族と生身で向き合った先に、イツキは光を見出せるか。

『ヒゲとナプキン』より

男性として、過去を隠して生きているイツキ。

それでも女性として育ってきた過去・自分の身体からは逃げられないし、悩みがなくなるわけではない。

誰にも言えない、見た目にはわからない。苦労や葛藤がある。

そんなトランスジェンダーの胸の内を丁寧に描いた作品です。

FTMの恋人はどんなことを考えてるの?

彼自身はどう思ってるのかも知りたいな…

【deidei】

そんな方のために、主人公の”イツキ”がどんなことに悩んでいたのかをご紹介します!

FtMと一括りにしても、一人一人考え方は違うので、恋人に直接聞く方がいいですが、

直接聞くのは傷つけちゃうかもしれなし、聞きづらいですよね。

なので、今回は『ヒゲとナプキン』の中から、3つ紹介していきます。

  1. 恋人との行為のこと
  2. 結婚のこと
  3. 子どものこと

恋人との行為のこと

【deidei】

恋人ができたら、手をつないだり、キスしたり、それ以上のこともしたりしますよね。
でも、男の身体ではないFtMだと歯がゆい思いをすることも多いです。

恋人と一緒に服を脱ぎたいと思っていても、身体は女性。

男だと思われたい気持ちから、胸を見せたくないと思っている人は多いです。

”イツキ”もその一人。

乳房を切除するまで、イツキはたとえ交際中のパートナーの前でも裸を晒すことはできなかった。 性行為に及ぶときでさえ、Tシャツを着たままだった。みずからの肉体が〝 女性のもの〟であると視覚 的に認識されることは、イツキにとって何よりも耐え難い恥辱だった。

”イツキ”と同じFTMの私も、乳房切除手術をして、平らな胸になってからやっと服を脱げるようになりました。

服を脱げるようになったからといって、悩みがなくなるわけではありません。

”イツキ”の場合は、上半身は男らしくなっても、下半身は女性のまま。

彼女が感じる。絶頂に達する。それは男として、この上ない喜びではあった。だが、それはあくまでも精神的な充足感だった。イツキ自身が肉体的に得られる快楽は、そこにない。

~ 中略 ~

性的な快楽を満たそうとすればするほど、これまで否定してきたはずの「女性であること」を実感させられる。自分がオンナなのだと突きつけられる。気持ちいいのに、気持ち悪い。求めたいのに、求めたくない。

『ヒゲとナプキン』より

彼女と一緒に気持ちよくなりたいと思わないわけではない。

でもそれ以上に、女性である部分を意識したくない気持ちが強く、肉体的には満たされないことをもどかしく思うことがあります。

もちろん、下半身も男性器を形成する手術はありますが、費用が高く、リスクも高いので、その手術をしていない方も多いです。

FtMの悩みは、身体を見られたくない、自分が肉体的に満たされないことだけじゃありません。

サトカは、本当に日々のセックスに満足しているのだろうか。そんな不安も抱えていた。女性にとって、おそらくは最大の快楽である膣への挿入を、イツキは叶えてやることができない。

『ヒゲとナプキン』より

恋人が過去に付き合った人との行為と自分とを比べられて、満足してもらえないんじゃないかと不安になることもあります。

結婚のこと

【deidei】

FtMでも、必要な手術をうければ、性別を変更して女性と結婚することはできます。

FtMが性別を変更するためには、『性別適合手術』を受けて、子宮と卵巣を摘出する必要があります。

でも、FtM全員が手術をするわけではありません。

この物語に出てくる”イツキ”も性別適合手術をしていないFtMの一人。

だから、恋人が「結婚したい」と思っていても、今の法律だとできないのです。

みずからがトランスジェンダーであるという境遇を受け入れた時点で、イツキは自分の人生から「結婚」というイベントは削除したつもりでいた。

~ 中略 ~

だが、サトカはどうだろう。本来ならすぐそこに「結婚」という選択肢が用意されている身の上だ。どんな相手を選ぼうが、結婚へハードルが果てしなく高いイツキとは事情が異なる。イツキ以外の男性を選べば、今すぐにでも結婚できるのだ。

『ヒゲとナプキン』より

自分ではない男性と付き合ったら簡単にできる「結婚」も、叶えてあげられない悔しさ・申し訳なさを感じることもあります。

物語の中では、”イツキ”の親友の”ジン”(FtM)も結婚に対して苦い過去を語っていました。

「二年近く一緒にいたのかな。もう結婚したいなと。この子のためなら子宮とってもいいかなとまで思ってた。ある日、向こうのご両親に、彼女と結婚したいと申し出た。

~ 中略 ~

ご両親に土下座されてさ。『このまま何も言わずに別れてほしい』って。お父さんから涙ながらに懇願されて」

『ヒゲとナプキン』より

戸籍の性別変更したら結婚できるとはいえ、もう一つ大きなハードル、両親へのカミングアウトが待ってます。

場合によっては、”ジン”のように理解してもらえないかもしれないのでは?と不安になることもあります。

子どものこと

戸籍の性別を男性に変えて、女性のパートナーと結婚はできる。

でも、男性としての生殖機能を持たないFtMは、自然に子どもを授かることができません

そのため、FtMと女性とのカップルで子どもを育てたい場合は、養子縁組をするか、AID(非配偶者間人工授精)により授かることになります。

物語の中では、AIDで子どもを授かろうと奮闘しながらも、”イツキ”は

サトカと二人でパソコンの画面を見つめながら、震える指先で精子バンクのサイトへアクセスした。見ず知らずの素性もわからない男性の精子がサトカの卵子と交わることに、胸を焼かれるほどの苦しみがあった。

『ヒゲとナプキン』より

第三者から精子を提供してもらい、AIDで子どもをつくることを決めても、精子を持たない自分を責めてしまう”イツキ”の気持ちがとても伝わってきます。

【deidei】

今回紹介したのはほんの一部です。
”イツキ”と”サトカ”がこれらの困難をどう乗り越えていったのか…
もっと知りたい方は、『ヒゲとナプキン』を読んでみてください!

全体を読んで感じたこと

いつからそう思ったのか、今では思い出せないですが、『大人になったら、結婚して、子どもを作るのが普通』だと思っていました。

それが、だんだん大人になっていくにつれて、トランスジェンダーだと気づいてからは、普通のことを普通にできない自分に愕然としました。

  • 女性と結婚するためには、手術をして戸籍の性別を男性にしないといけない
  • 自然に子どもを授かることができないから、他の人から精子をもらわないといけない
  • 血のつながっていない子どもを愛せるかもわからない

普通の生活をするための壁があまりにも厚いです。

でも、『ヒゲとナプキン』を読んで、

普通ってなんだろう。
家族ってなんだろう。

あらためて考えてみると、自分の思ってた普通って何だったんだろうなと思えてきました。

普通のイメージに縛られていたのは自分自身でした。

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ABOUT ME
deidei
ひっそり埋没しながら暮らしているFTM(女→男に戸籍変更済み)です。 女性として地方で生活→就職のため都会へ→現在は、男性サラリーマン街道邁進中!(7年目) 環境を変えることで、少しずつ、自分らしく生きれるようになりました。 FTMとして生活する中で学んだことや自分自身の経験を、わかりやすく発信していきます。
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