LGBT本紹介

LGBTとカミングアウトされた側が、否定や偏見を乗り越えるヒント

LGBTと家族のコトバ

最近では、各都道府県で同性パートナーシップ制度を導入したり、同性婚の裁判が行われている中で、『LGBT』という言葉を目にするようになりました。

実際に、日本では左利きの人やAB型の人と同じぐらいの割合でLGBT当事者がいると言われています。

とはいえ、LGBTの人がいることが浸透してきても、「テレビで見るような派手な格好をしてる人でしょ」「自分には関係ない」と感じている人も少なくないようです。

また、家族や兄弟など、身近な人にLGBTだとカミングアウトされて、「そんなわけがない」と否定的になる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか?

一般的でないものを異質だと感じてしまうかもしれません。

でも、”男女の夫婦と血のつながった子ども”という一般的な家族像に当てはまらない人はいますし、一つの家族像に縛られる必要がないと、『LGBTと家族のコトバ』の著者は言っています。

男女のカップルでなくてもいい。子どもと血がつながっていなくてもいいし、子どもがいなくてもいい。1対1のカップルでなく、1対複数の関係でもいい……。家族の数だけ、家族のかたちがあるのです。

『LGBTと家族のコトバ』はじめに より

その言葉通り、一つの家族像に縛られずに生きる15名にインタビューをして、これまでの生き方や家族との向き合い方など多様な価値観を紹介しています。

  1. 娘が息子に(妹が弟に)なった家族
  2. 元女性の夫とその妻
  3. 9歳差のレズビアンカップル
  4. レズビアンの娘とその母
  5. 男性と女性の間にいる母
  6. 性別に関係なく息子にとっての母
  7. 男性から女性になった夫
  8. 性自認は男性だが子ども2人を生んだ母
  9. ゲイ3人で暮らす家族

※詳細な目次は、Amazonのkindle版サンプル(無料)で見ることができます

今回は、『1.娘が息子に(妹が弟に)なった家族』のコトバを引用しながら、カミングアウトされた家族がどう受け入れていったのかを紹介していきます!

娘が息子に(妹が弟に)なった家族のコトバ

女性の身体で生まれたけど、心の性別で生きて行くことを決意して、現在は男性として暮らしている麻斗さん(元 麻未さん)。

トランスジェンダーであることを家族にカミングアウトした時は、すぐに受け入れてはもらえませんでした。

それでも粘り強く家族と向き合っていく中で、家族との絆をより深くしていきました。

娘(または妹)のカミングアウトを受けて、母・父・兄は、どのように受け止めたか、どうやって受け入れていったか、今はどのように感じているのかを知ることで、あなたの身近にいるLGBT当事者との関係をつなぐヒントが見つかるかもしれません。

カミングアウトされた時の気持ち

娘に初潮が来てから始まったチック症、胸のふくらみを隠したいと言われた時、何となく聞きたくなくて、深く聞くことをしなかった母 恵子さん。

娘が心療内科に行こうと思っていることを打ち明けられたときは、

なぜ自分の人生に性同一性障害という話題が入ってきてしまったんだろう。なぜこの子が私の子なんだろう……。そんなふうに考えたこともあった。

※性同一性障害:出生時の性別と、自認している性別が異なっており、身体の性別に違和感を覚えている状態のこと。
現在では、性同一性障害ではなく、性別違和が用いられるようになっている。

娘は女だということを全く疑わなかった父 義則さんは、娘の中身が男の子だとわかったつもりだったけど、そんなはずはないという気持ちが大きく、

「治療には何年もかかるかもしれないけど、女の子に戻るなら、病院で見てもらわなければ、と思いました。娘はきっと病気だから、いつか治ると思っていたんです」

すぐにはカミングアウトの言葉を飲み込めなかった兄 孝兵さんは、妹が置かれている状況が分からず、

「そのあとに、怖いという感情が押し寄せてきました」

妹はこれからどうなるのか?僕たち家族は、どう変わるのか、と……。

「麻斗は、事前にいろいろ調べ、納得してのカミングアウトだっただろうけど、当時の僕は、性同一性障害への知識がまったくなかったですからね」

当時、人気テレビドラマ『金八先生』で性同一性障害の生徒が出ていたことから、存在は知っていても、どういう人のことなのか、結婚や就職ができるのか、病院で治療すれば治るものなのか、わからないことだらけ。

どう受け止めていいか分からず、戸惑っている様子が伝わってきます。

現在では、当時よりもLGBTの存在が知られてきていますが、具体的にどんな人を指すのか知らない方も多く、偏見を持たれたくないからなどの理由でカミングアウトしない当事者も多いので、身近にはいないと感じている人も少なくないのかもしれませんね。

受け入れる過程で

今まで娘(または妹)だと思っていたのに、カミングアウトを機に息子(または弟)として接することは、やろうと思ってもすぐにできることではありません。

トランスジェンダーの麻斗さんは、家族に理解してもらえるように何度も話をして向き合いました。

母 恵子さんは、話を聞くたびに身体が震えるほど拒否していたこともありましたが、性同一性障害の診断をおこなっている医師の話を聞いて、少しずつ理解できるようになっていったそうです。

「診察した結果、『あなたは違いますよ』という診断も、私はあるべきだって思ったんです。だから娘である証拠みたいなエピソードを話して、『それでも男なんですか?』と詰め寄りました」

すると医師は答えた。「イスに座る時、お母さんは足を閉じるけれど、麻未さんは当たり前のように開いてますよね。足を組む時、お母さんは膝の上に膝を重ねるように組むけれど、麻未さんは膝にくるぶしをのせるように組むんです。この子は、脳が男の子なんですよ」

この子の心は男の子なんだと理解できるようになったからといって、娘が男性に近づいていく姿を見て複雑な気持ちになることもあったそうです。

「変わる姿を見るのは複雑で、『よかったね』とは言ってあげられなかったかな。麻未ちゃんじゃなくなるんだな……って、正直寂しかったですね。でも、本人は楽しそうでしたよ」

カミングアウトを受けて、妹がどんな風に変わっていくのか不安に思いながらも、賛成も反対もせずに理解しようと努めていた兄 孝平さんも、ふと寂しくなる時があるという。

「男友達が妹の結婚式に出て泣いたという話を聞くと羨ましかったりもします。『あぁ、僕はもう、妹の結婚式には出られないんだな』って。麻未のウエディングドレス姿を見て泣きたかったなぁった、しんみりしてしまうんですよね」

父 義則さんは、会うたびに娘から話を聞いていて、『本人があれだけ言っているんだから、認めてあげるしかないのかね』と理解できるようになっていったけれど、息子として接することに苦労した様子を語っています。

お兄ちゃんに話しかける時みたいに、『飯食ったか?』みたいな感じで変えていきました。まだ単身赴任は続いていたから、久しぶりに自宅へ帰って姿を見かけるたびに、あの子は男の子なんだって意識しながら過ごしていましたね」

家族がLGBTだということ、特に、見た目も変わっていくトランスジェンダーは、簡単には理解できないし、娘を息子だと思って接することもとても時間がかかること。

この家族は、しっかりと性同一性障害と向き合って、雪解けのように徐々に理解し、応援できるようになっていきました。

娘が息子に変わった今思うこと

トランスジェンダーの麻斗さんが行っているLGBTに関する活動を手伝うようになった母 恵子さん。

自身がカミングアウトされた時に娘が性同一性障害であることを、誰かに話したかったけどできなかった経験から、

「私が一番求めていたのが、同じ立場の人と話すことだったんですよね」

だから、同じように葛藤を抱えている親御さんがいたら、話を聞いてあげたいと思う

子どもがトランスジェンダーだと知る前は、LGBTが遠い世界の話だったという父 義則さんは、今は職場にLGBTの人がいても迷わず受け入れられるようになったそうです。

今は、男性も女性も関係ないと思っている。人と接するときに、相手の本質を見ることの大切さも学んだ。「LGBTだけでなく。障害のある人たちも、こちらが意識したらいけないって感じるんです。普通に接した方が、お互いに気持ちがラクだと思います」

小学校で教師として働く兄 孝平さんも、麻斗さんのこれまでの体験を職場でも生かしていきたいと、前向きに語っています。

弟の経験を通して学んだことは多い。特に家族の理解と周りの人の受け入れ態勢がいかに大切か、ということ。

「そのためには、詮索はしないけれど、常に悩んでいる生徒がいないかアンテナを高く張って、教え子に向き合いたいなと思います」

この4人の家族のインタビューを読んで、

娘が息子になったことを寂しいと思う気持ちは残っていても、本人の意思を尊重し、理解しようという姿勢かあったからこそ乗り越えられたのかなと思います。

とはいえ、否定や偏見を抱えている中で、自分のLGBTの当事者や当事者の家族が身近にいないと、「将来どうなるんだろう」と不安になることもありますよね。

父 義則さんのコトバにもあったように、LGBTだからといって、その人の本質は何も変わりません

男性として、女性として
息子として、娘として

性別でくくるのではなく、一人の人として向き合い、理解していこうとすることがとても大切なことではないでしょうか。

今回紹介した本の基本情報

『LGBTと家族のコトバ』は、ロールモデルとなるLGBT当事者・アライをインタビューするメディア『LGBTER』によって出版された本です。

今回紹介した、トランスジェンダー(FTM)とその家族以外にも、様々な家族のインタビューが収録されています。

うちの家族はよその家族とは違うのかなと不安になってる方も、多様な家族の一つだと気づける一冊ではないでしょうか。

ABOUT ME
deidei
ひっそり埋没しながら暮らしているFTM(女→男に戸籍変更済み)です。 女性として地方で生活→就職のため都会へ→現在は、男性サラリーマン街道邁進中!(7年目) 環境を変えることで、少しずつ、自分らしく生きれるようになりました。 FTMとして生活する中で学んだことや自分自身の経験を、わかりやすく発信していきます。