LGBT本紹介

LGBTの生徒からの相談、学校側はどう対応すればいい?

学校・病院で必ず役立つ LGBTサポートブック

自身の性別に対する違和感や、性的指向が同性に向いているかもしれないなど、小学校~大学などのLGBTの児童生徒は、周りの友達と違うと感じて悩む機会が多くなります。

『LGBTサポートブック』の著者もこのように主張しています。

青少年期のLGBT当事者が成人の当事者以上に深刻な問題を抱えていることがわかってきました。そこで学校教育にかかわる人たちにもLGBTについての理解を深めていただけるよう、このような内容で出版することに変更しました。一人でも多くの学校教育にかかわる方が、若年LGBTの支えとなってくださることを強く望みます。

『LGBTサポートブック』はじめに より

学校生活の中での経験は、大人になってからの考え方や人間関係にも影響していきます。

LGBTの生徒たちがどんなことに悩み・ストレスを抱えているのか学校側がどのように配慮すれば安心して通えるのかを深く考え、生徒に寄り添うことがとても大切です。

そのため今回は、『LGBTサポートブック』の中から、Part2『学校・教育関係スタッフが知っておくべき知識』に着目し、具体的な相談に対する対応方法をご紹介します。

学校での生徒の言動にどう対応すればいい?

スカートを履きたくないとの訴えがあった

まずは、子ども本人がどのようにしたいのか、よく話を聞いて、学校でできる対応を一緒に考えましょう

生まれた時の性別として学校生活をおくっているけれど、本人は反対の性別だと感じている場合、自尊心や人間関係に大きなダメージがあります。

特に自分の性別を表現するものである”制服”を嫌がることも珍しくはありません。

岡山大学大学院保健学研究科の中塚幹也教授らの調査(2003年)では、性同一性障害と診断された当事者の約3割が不登校を経験していて、この要因のひとつに「望まない性別の学生服の着用」があることが明らかにされています。

『LGBTサポートブック』Part2学校・教育関係スタッフが知っておくべき知識16-a より

生徒が学生服のスカートや詰襟が苦痛である場合は、このような対応をとることができます。

  • 希望する性別の制服で通学できるようにする
  • 体操服やジャージなどの着用を許可する

ただし、制服を変更したり、体操服を着用する時には注意が必要です。

いきなり着ているものが変わると、周囲の生徒達には不審に思い、注目されてしまうことがあるからです。

仲のいい同級生などに事前に伝えておくなど、望まない噂や誤解が広まらないように備えておきましょう。

また、場合によっては生徒本人の希望に100%そえないこともあります。

そのため、本人の希望を聞き取って、どうすれば過ごしやすくなるのかを話し合い、お互いに納得できる「落としどころ」を探すようにしましょう。

男子生徒が、自分は女性なので、水泳の授業には出たくないと言っている

水泳の授業に関する相談の場合も、”制服”に関する相談と同様に、本人のニーズをしっかりと聞きましょう

トランスジェンダーの生徒にとっては、水泳の授業は非常に大きな苦痛となることがありますが、その理由は生徒によって違います。

※トランスジェンダー:生まれた時に割り当てられた性別とは違う性別を生きようとする人のこと

トランスジェンダーの生徒が水泳を嫌がる理由は大きく2つ考えられます。

  1. 水着の問題
  2. 更衣室の問題

強い性別への違和感のある生徒は、他の生徒に見られること以上に、自分自身の身体を見ることを苦痛に感じることがあります。

更衣室についても、身体の性別で振り分けられた更衣室での着替えを苦痛に感じますが、かといって望んでいる性別の更衣室を許可することは困難です。

これら水泳の授業に関する問題は、2015年4月に文部科学省が出した「性同一性障害に係る児童生徒に関するきめ細かな対応の実施等について」の中にある「性同一性障害に係る児童生徒に対する学校における支援の事例」に対応事例が挙げられています。

<水泳>

・上半身が隠れる水着の着用を認める(戸籍上男性)。

・補修として別日に実施、またはレポート提出で代替する。

<更衣室>

・保健室、多目的トイレ等の利用を認める。

文部科学省「性同一性障害に係る児童生徒に関するきめ細かな対応の実施等について」より

ただし、このように水着や更衣室利用を苦痛に感じている生徒はトランスジェンダーに限りません

例えば、かつて心臓の手術をして、その傷跡が大きく残っている生徒も、他の生徒の前での着替えを苦痛に感じるかもしれません。

トランスジェンダーの生徒に向けた個別の取り組みであっても、それを普遍化することですべての生徒が過ごしやすい環境につながっていくのではないでしょうか。

文化祭で女装コンテストが企画されてる

学校側が一方的に禁止するのではなく、生徒自身が問題がないのか考え、解決に向けた選択ができるように援助しましょう

日本では、テレビや雑誌の中で、美しい異性装者や個性的な芸能人が人気を集めているように、比較的寛容な歴史・文化があります。

しかし、日常生活では、いじめや偏見の対象になったりと、必ずしも生まれ持った性別と異なる姿で生活する人たちが受け入れられるわけではありません。

だからと言って、学校側が中止を求めてしまっては、問題の本質は解決できないのではないでしょうか?

そこに、誰かに対する差別、偏見、侮辱、蔑視、否定がないか、意図しなくても誰かを傷つけたり、貶めたりしていないか……? 企画の意図、面白さや盛り上がることの意味、結果を考えてみる必要があるでしょう。

『LGBTサポートブック』Part2学校・教育関係スタッフが知っておくべき知識16-c より

本来、異性装はいけないこと・悪いことではありません

どのような装いや性表現をするかは個人の自由で、尊重されるべき権利です。

「女装コンテスト」が企画として挙がった機会に、改めて性の多様性やセクシュアルマイノリティへの差別・現状を伝えて話し合うことで、より視野が広がる経験になるのではないでしょうか。

※性表現:見た目や言動などで表す性別のこと

カミングアウトしたいと生徒から相談があった

性的指向や性自認について、いつ・どこで・誰に話すかは、当事者の想いと自己決定を最大限に尊重しましょう

とはいえ、生徒のカミングアウトには注意が必要です。

カミングアウトの人数が増えるほど自殺未遂のリスクは高まり、6人以上にカミングアウトしていると自殺未遂リスクは3.2倍に高まることを示す研究もあります。信頼できると思った人にカミングアウトしたつもりだったのに、翌日には他の友達みんなに言いふらされていて心底傷ついた、といった経験をしている当事者もいます。

『LGBTサポートブック』Part2学校・教育関係スタッフが知っておくべき知識16-d より

このように、カミングアウトによって差別的な反応に触れる機会もあるのが現実です。

そのため、カミングアウトを考えている生徒に対しては、「カミングアウトしても大丈夫だよ、先生たちは話を聞く準備があるよ」というメッセージを複数の教員を通じて全校生徒を対象に伝え続けて、安心できる学校にしましょう。

セクシュアルマイノリティに関する授業を行うだけでなく、セクシュアルマイノリティ支援・啓発のポスターを掲示したり、LGBTに関連する書籍を図書館や保健室に置いておくことも肯定的なメッセージにつながります。

したがって、カミングアウトしたいという本人の意思を尊重することは大切ですが、それ以上に、カミングアウトしても安心できる環境を整備するようにしましょう

就職は希望の性別でしたいという相談があった

このような相談を受けた場合は、本人の希望を聞いたうえで、どのように実現できるか一緒に考えましょう

就職活動はLGBT当事者にとって困りやすいことの一つです。

特に困難に感じることは大きく2つあります。

  1. ジェンダーの壁
  2. カミングアウトの壁

1つ目のジェンダー壁としては、就職活動における男女の違いが挙げられます。

服装やマナー、エントリーシートの性別欄など、男女で分かれているものが多いですよね。

特にXジェンダーの場合は、これらの男女分けによって働きづらいと感じてしまいます

2つ目のカミングアウトの壁としては、セクシュアリティに関しての困りごとを相談しづらい環境であることが挙げられます。

※Xジェンダー:反対の性別や、男・女に規定されないセクシュアリティの人のこと

これらの問題があると理解した上で、生徒から就活に関して相談を受けた時は、「戸籍の性別以外で働けるわけがない」「カミングアウトしたら就職先は見つからない」などと決めつけないようにしましょう。

そのうえで一緒に解決策を考えても思うようにいかない場合は、LGBTに関する電話相談や支援団体を紹介してサポートしましょう。

※LGBTの就職に関する支援団体は、『認定NPO法人 Re Bit』をはじめとして様々な団体があります。

今回紹介した本の基本情報

いずれにしてもLGBTが少数派であることに違いはありません。どんな場合においても、多数派である方が生きやすいように、性的指向が少数派であるために、LGBT当事者たちはさまざまな生きづらさを抱えています。

『LGBTサポートブック』はじめに より

少数派であるLGBTの児童生徒は学校で様々な悩みを抱えながら通っています。

そして、それらの悩みは少数派の中でも生徒一人一人違います

LGBTの生徒が学校の中でどのようなことに困難を感じ、それに対して学校側がどう対応できるのか。

真剣に生徒と向き合いたいと思っている方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか?

<編著者情報>

はたちさこ:
フリープランナー。甲南女子大学大学院博士前期課程(社会学)修了。うつや不安障害を長らく患っているため、患者として数々の医療機関を現地調査。

藤井ひろみ:
神戸市看護大学大学院看護学研究科修了(看護学博士)。専門は助産学、女性学、クィア・スタディーズ。共著に『医療・看護スタッフのためのLGBTIサポートブック』など。

桂木祥子さちこ
多様な性を生きる人々のリソースセンターQWRC理事。精神科診療所にソーシャルワーカーとして勤務。LGBTの電話相談を立ち上げ、医療・福祉従事者向けの講座などを担当。

ABOUT ME
deidei
ひっそり埋没しながら暮らしているFTM(女→男に戸籍変更済み)です。 女性として地方で生活→就職のため都会へ→現在は、男性サラリーマン街道邁進中!(7年目) 環境を変えることで、少しずつ、自分らしく生きれるようになりました。 FTMとして生活する中で学んだことや自分自身の経験を、わかりやすく発信していきます。
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