LGBT本紹介

同性パートナーが異性カップルのような「当たり前の生活」をするには

同性婚 私たち弁護士夫夫です

「同性愛者からの相談といっても、人それぞれ生活実情や年齢も違うので内容は千差万別である。それでも、同性愛者からの法律相談の類型あるいは傾向というものがないわけではない。」

同性カップルであることを公言し、弁護士夫夫として弁護士事務所を開設している南 和行さんの著書『同性婚』の冒頭には、このように記されています。

特にカップルでの生活においては、二人で共同生活をしている実情があるにもかかわらず、法律や制度が異性カップルを「当たり前」としているために、同性カップルが不便や不利益にさらされるということがある。

相続や老後の財産の管理という場面が典型的である。そのほか国際カップルの問題、日常の契約や取引の問題など、異性カップルでは「当たり前」のことであっても、同性カップルは意識的な工夫をしなければ自分たちの生活を安定させることができない。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

その中でも、同性同士のカップルでは、異性カップルと同等の権利が認められていないことによる相談が多いそうです。

今回は、『同性婚』のうち『第二章 同性愛者からの法律相談』に注目し、同性パートナーが悩みがちな相続本人に代わっての同意などについてご紹介します。

↓ Amazonのkindle unlimitedで読めます

※kindle unlimitedは、Amazonの電子書籍読み放題サービスです。
初めてサービスを利用する方は1ヶ月無料

同性パートナーに関するよくある法律相談とその解決策

同性パートナー間での相続

同性カップル間ではお互いの財産を相続する権利はありません

同性カップルの関係を法律上保護する制度がない現在、同性カップルは何年一緒に暮らしていようとも法律上は赤の他人とされてしまうからです。

その典型的な例として、カップルの片方が亡くなった後の住居の問題が挙げられます。

一方の名義で不動産を購入し、もう一方が同居人の場合、そのまま住み続ける権利を主張することはできますが、不動産を取得する同居人は名義人の親族になってしまいます。

さらに、そのまま住み続けることもままならない場合もあるようです。

暮らす権利を主張するにしても、不動産を取得する相続人、たとえば亡くなったパートナーの親から「それでは、あなたはわが子とどういう関係だったのか?」と問われた時、どのような説明をすればよいだようか。

~ 中略 ~

けっきょく、パートナーの両親には「自分はとても親しい友人として一緒に暮らしていたただのルームメイトだ」とだけ告げて、パートナーとの思い出の住まいからはそのまま立ち退いたという話も珍しいものではない。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

一方の死亡後、その不動産を相続したいのであれば、遺言を作成しておくと良いでしょう。

遺言があると、本人の死亡後、財産の継承は遺言に記された本人の意思に基づいて進めることができるからです。

ここで、遺言書の方式にも触れておきましょう。

一般的によく用いられている方式は、『自筆証書遺言』『公正証書遺言』の2つがあります。

  • 自筆証書遺言:全文を自筆で書いたうえで、本人の死後、家庭裁判所で「検認」手続きを経て執行される
  • 公正証書遺言:本人が公証人役場で作成するため、「検認」の手続きを経ずに執行される

『自筆証書遺言』は手軽に作成できますが、『検認』の手続きが必要になります。

家庭裁判所で遺言に記載された相続人(ここでは同性パートナー)と法定相続人(親や兄弟など)と一堂に会し、遺言を全員で回覧するため、法定相続人から否定的な発言をされることも考えられますよね。

そのため、死亡後の相続がスムーズにおこなうためには、弁護士が関わって公証人役場で作成する、信用性の高い『公正証書遺言』を作成しておくと良いでしょう。

不動産の共有名義と生命保険

一般的に、男女の婚姻した夫婦であれば、お互いの所得が条件に達していれば、二人の所得を合算した上で高額なローンを組むことができ、不動産も共有名義にすることができることが多いです。

しかし、同性パートナーの場合は二人の所得を合算したローンを組んだり共有名義にすることは難しいのが現状ではないでしょうか。

男女の夫婦でも、婚姻届け出していない事実婚、あるいは内縁関係であると、二人の所得を合算してローンを組むこと、そしてトレにより不動産を共有名義にすることを拒否する銀行や金融機関が多い。

そうなると、男と男、あるいは女と女の二人が、男女の夫婦となんら変わらない同性カップルだといっても、銀行がそれを認めて二人の所得を合算し不動産を共有名義で取得することを認める可能性は乏しいだろう。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

全額を現金で購入する場合、共有名義にすることができますが、一方が資金を出して購入すると、もう一方に贈与税が課せられるので注意が必要です。

生命保険も、不動産の名義と同様に希望に沿わないことが多いです。

なぜなら、ほとんどの生命保険会社が保険契約の受取人を一定の範囲の血族あるいは配偶者に限っているからです

受取人の例外を認めている保険会社であったとしても、

男女の内縁関係については、両名が法律上独身であることや、同居期間が一定以上あることを条件に生命保険金の受取人として指定することを許容する保険会社もあるようである。しかしその生命保険会社が同性カップルを同じように取扱うかはわからない。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

不動産購入時のローンや生命保険の受取人に関しては、実は法律の問題ではなく、金融機関や生命保険会社の運用の問題です。

金融機関も生命保険会社も、本当のカップルであるかを、「婚姻届による婚姻関係を形成したか」によって判断しているにすぎません。

同性カップルであっても婚姻届と同等の証明書があれば対応が変わるかもしれませんね。

同性パートナーでの日常家事代理権

同性カップルの関係が法律上保護されていないことから、日常の様々な場面でも問題が生じます。

『日常家事代理権』もその一つ。

民法761条は、日常の家事から生じる債務については、当然に夫婦の連帯債務になるということを規定している。

これを日常家事債務の連帯というが、1969年の最高裁判決はこの民法761条について、「夫婦は相互に日常の家事に関する法律行動につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である」と示し、民法761条によって、日常家事債務の連帯が認められるに止まらず、日常家事において夫婦が相互に代理権を持ち合うことも認められるとした。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

『日常家事代理権』とは具体的に、妻が夫の名前で契約をしたり、妻のハンコを夫が代わりに押印することです。

同性カップルでは、結婚しているわけではないため、民法761条が適用されず、『日常家事代理権』も認められません。

もし、同性カップル間で『日常家事代理権』と同等の権利を示したい場合は、相互に「日常生活のことについてはお互いに代理権をあらかじめ渡し合おうね」と約束し、第三者に示すことができる委任状などを用意する必要があります。

医療機関における同意および任意後見制度

医療機関における同意や面会は、法律問題とは少し異なり、医療機関が誰を家族ととらえるかという判断に基づきます。

そのため、意識がある場合や病気や健康の危険度が低い場合は、本人が医療機関に「この人が家族だ」と言えば事足ります。

本人の意思表示が確認できない場合でも、行政が発行する同性パートナーシップ証明などによって、家族と認められるのではないでしょうか。

さらに、事故により後遺症を負った場合や、認知症を患って判断能力を失いつつある場合なども起こりえます。

その際に、パートナーに代わって判断したり、財産管理をするためには、『後見人』となる必要があります。

『後見人』となる方法は2つありますが、同性パートナーの場合は、『任意後見契約』によって後見人になることができます。

  • 成年後見制度:認知症などで判断能力が衰えた人の代わりに適切な財産管理をするための制度。本人以外の成年後見開始の審判申し立ては、配偶者と四親等内の親族に限られる。
  • 任意後見契約:将来において自らの後見人として財産の管理をすることを委託する相手と本人の間で締結される契約。本人自らの意思で任意後見人を選ぶことができる。

この2つは、『本人以外がイニシアチブをとって後見人の選任を申し立てる』か『本人のイニシアチブに基づいて後見人を選任する』かという点で異なります。

『任意後見契約』は後者のため、同性パートナー間でも任意後見契約を締結することができます

若いカップルであっても、いつどのような形で相手の判断能力が衰えるかわからないため、万が一の時に対処できるよう、『任意後見契約』を締結しておくと良いのではないでしょうか。

養子縁組制度の利用

相続の問題や成年後見申立をする権利がないことから、同性カップル二人で養子縁組するという事例もあります。

養子縁組をすれば同性カップルの二人は法律上の親子となり、相続する権利、成年後見申立する権利も得ることができます

しかし、これはあくまで親子関係であり、婚姻関係とは異なります。

さらには、婚姻の代替手段として養子縁組をした場合、「親子になる意思ではなく、婚姻する意思でされた養子は無効である」と言われる可能性もあるそうです。

将来的に同性婚が認められるようになった時、一度養子縁組をすると、同性婚ができなくもなります

民法736条は、離縁等により養子縁組を解消した後でも、過去に養子縁組をした者同士は婚姻することができないと規定する。

『同性婚』第二章 同性愛者からの法律相談 より

そのため、同性婚の代替案として養子縁組をするよりも、『公正証書遺言』や『任意後見契約』を活用する方がいいのではないでしょうか。

今回紹介した本の基本情報

Amazon kindle unlimited対応

同性愛者として私が感じてきたこと、弁護士として関わってきた同性愛者の葛藤や困難、そして法律が家族や婚姻をどのように考えているのか、あるいは憲法と同性婚と社会について。

「同性愛者の知り合いが一人もいない」「今まで同性愛者に会ったことがない」という人にこそ、この本を手にとってもらいたい。そして、同性愛だけではない多様な性を、少しでも身近な当たり前の存在として感じてもらえたらと思う。

『同性婚』 はじめに より

今回は、同性カップルに多い法律相談とその解決策についてご紹介しました。

弁護士夫夫として活躍されている南 和行さんの著書『同性婚』は、一当事者としての経験や、同性婚にとどまらない婚姻の本質についての弁護士としての見解なども紹介されています。

多様な家族がいて、それが「当たり前」だと気づくきっかけになる1冊です。

<著者情報>

南 和行:
同性パートナーの弁護士 吉田昌史とともに、法律事務所「なんもり法律事務所」を設立。
一般民事事件のほか、離婚・男女問題や無戸籍問題など家事事件を多く取り扱っている。

↓ Amazonのkindle unlimitedで読めます

※kindle unlimitedは、Amazonの電子書籍読み放題サービスです。
初めてサービスを利用する方は1ヶ月無料

ABOUT ME
deidei
ひっそり埋没しながら暮らしているFTM(女→男に戸籍変更済み)です。 女性として地方で生活→就職のため都会へ→現在は、男性サラリーマン街道邁進中!(7年目) 環境を変えることで、少しずつ、自分らしく生きれるようになりました。 FTMとして生活する中で学んだことや自分自身の経験を、わかりやすく発信していきます。